労災保険法
特別加入における保険給付

特別加入者が業務または通勤により被災した場合には、所定の保険給付が行われるととも. に、これと併せて特別支給金が支給されます。

 

目 次

  1. 保険給付
  2. 通勤災害の適用除外
  3. 特別支給金
  4. 給付基礎日額

保険給付

次の点において通常の労働者とは異なる取扱いがなされる。

  保険給付における一般被保険者との相違点
1 特別加入者に係る休業補償等給の支給事由については、「賃金を受けない日」という賃金の喪失要件は設けられていない
(平成28年6月15日基発0615第2号)
2 通勤災害により療養給付を受ける場合であっても、一部負担金は徴収されない。(昭和52年3月30日基発192号)
3 二次健康診断等給付は支給されない。(法34条1項、法35条1項、法36条1項)

複数業務要因災害に関する保険給付も支給されます。(法34条1項、法35条1項、法36条1項)

中小事業主等には本来の労働者と異なりいわゆる賃金がないため賃金喪失要件は設けられていません

特別加入者については、原則として、労働安全衛生法の適用がないことから定期健康診断などの適用対象となっていません。健康診断の受診について自主性に任されていることから二次健康診断等給付の対象としないこととなっています。(平成13年3月30日基発233号)

  • 休業補償等給付に係る賃金喪失要件が設けられていないため療養中に事業に係る収入があったときであっても休業補償等給付の一定額が減額されることはありません

通勤災害の適用除外

一人親方等のうち、次に掲げる者は、住居と就業の場所との間の往復の実態が明確でないため、「通勤災害に関する規定は適用されない
(法35条1項本文かっこ書、則46条の22の2)

1 自動車を使用して行う旅客若しくは貨物の運送の事業または原動機付自転車若しくは自転車を使用して行う貨物の運送の事業(個人タクシー業者など)に従事する一人親方等(則46条の17第1号)
2 漁船による水産動植物の採捕の事業(船員法に規定する船員が行う事業を除く)に従事する一人親方等(則46条の17第3号)
3 特定農作業従事者及び指定農業機械作業従事者(則46条の18第1号)
4 危険有害な作業に従事する家内労働者及びその補助者(則46条の18第3号)

特別加入者のうち、①中小事業主等及び④海外派遣者については通勤災害に関する規定の適用は除外されていません

  • 中小事業主等の特別加入である場合たとえ自動車を使用して行う旅客または貨物の運送の事業を営んでいても通勤災害に関する保険給付を受けることができます

②一人親方等のなかで住居と就業の場所との間の往復の実態が明確でないものには、「通勤災害の規定が適用されません
一人親方等であっても、大工や廃品回収業などについては、通勤災害に関する規定が適用されます。(昭和52年3月30日労働省発労徴21号、基発192号)

③特定農作業従事者や指定農業機械作業従事者については通勤災害の適用はありません農作業のため農業用トラクターコンバインなどに乗って車庫から農作業場へ向かう途中での負傷などは補償対象業務災害になります。(昭和50年11月14日基発671号)

特定農作業従事者については、農産物や農作業のための資材などを運ぶために自宅の車庫から農作業場まで軽トラック(=指定農業機械に限らない)を運転する行為は、耕作などの作業に直接付帯する行為として補償対象(業務災害)となります(指定農業機械作業従事者については、指定農業機械に係る場合に限ります)。
(平成3年4月12日基発259号)

 

特別支給金

 

  •  特別加入者に対しても、休業特別支給金傷病特別支給金障害特別支給金遺族特別支給金支給される。
  •  特別加入者には、算定基礎年額のもとになるボーナスなどの特別給与がないか、あってもあらかじめそれを考慮して給付基礎日額を算定することができるため、特別給与を算定基礎とする特別支給金ボーナス特別支給金は支給されない。(特別支給金則19条)
    • 特別加入者に対しては「一般の特別支給金が支給されます

給付基礎日額

 

① 中小事業主等の場合

中小企業の社長や役員など(本来は労働者でない人)が特別加入するケースです。

 

■ ポイント

  • 給付基礎日額は
    3,500円〜25,000円までの16段階から選ぶ
  • 基準は
    → 自社の従業員の賃金水準などを考慮
  • 決定権者
    → 労働局長(形式上)

 

■ 実務的な扱い

  • 原則:本人の希望額が尊重される
  • ただし極端に不自然な場合は調整される

つまり 「だいたい自分で選べるが、常識的な範囲で」というイメージです。

 


② 一人親方等の場合

個人事業主(建設業・漁業・運送業など)向けです。

■ 基本ルール

  • 中小事業主と同じく
    3,500円〜25,000円の16段階
  • 判断基準は少し違う
    → 同業種の労働者の賃金水準を参考にする

■ 特例(重要)

  • 家内労働者などは
    2,000円・2,500円・3,000円も選択可能

これは収入が低い層への配慮です。


■ 実務的に重要な考え方(かなり大事)

給付基礎日額は次の2つに影響します:

 

① 保険料

→ 日額が高いほど高くなる

 

② 給付額(休業補償など)

→ 日額が高いほど多くもらえる


■ 具体例(漁船自営業者)

  • 保険料率:45/1000(かなり高い)

ここで戦略が出てきます:

 

✔ 方法①(コスト重視)

  • 給付基礎日額を低く設定
    → 保険料を安くする

 

✔ 方法②(保障重視)

  • 給付基礎日額を高く設定
    → 休業補償を厚くする

■ なぜ低くしてもいいのか?

理由はこれです:

  • 治療費(療養補償)は全額支給
    → 日額に関係ない

つまり 「ケガの治療費だけカバーしたいなら最低額でOK」

ただし 休業補償は減る(生活保障は弱くなる)

 


■ 一般労働者との違い

通常の労働者は:

  • 事故前3か月の給与で自動計算

特別加入者は:

  • 自分で日額を選ぶ(ここが本質的な違い)

 

③ 海外派遣者の場合

海外赴任者などの特別加入です。

■ ルール

  • 中小事業主と同じ扱い

つまり

  • 16段階から選択
  • 希望額ベースで決定

■ 全体のまとめ(重要ポイント)

この制度の本質は:

「自分で保険設計をする制度」

  • 低く設定
    → 保険料安い・保障薄い
  • 高く設定
    → 保険料高い・保障厚い

 

① 中小事業主等の特別加入者の給付基礎日額は、3,500円、4,000円、5,000円、6,000円、7,000円、8,000円、9,000円、10,000円、12,000円、14,000円、16,000円、18,000円、20,000円、22,000円、24,000円及び25,000円16階級の額の中から、当該事業に使用される労働者の賃金の額その他の事情を考慮して厚生労働大臣所轄都道府県労働局長が定める額である。(法34条1項3号、法35条1項6号、法36条1項2号、則46条の20第1項)

  • 原則として中小事業主等の希望額が尊重されますが当該特別加入者の収入などを考慮の上所轄都道府県労働局長により決定されます

 

② 一人親方等の特別加入者の給付基礎日額は、3,500円、4,000円、5,000円、6,000円、7,000円、8,000円、9,000円、10,000円、12,000円、14,000円、16,000円、18,000円、20,000円、22,000円、24,000円及び25,000円16階級の額の中から、当該事業と同種若しくは類似の事業または当該作業と同種若しくは類似の作業を行う事業に使用される労働者の賃金の額その他の事情を考慮して厚生労働大臣所轄都道府県労働局長が定める額である。ただし、家内労働者及びその補助者の場合は、暫定的に2,000円2,500円または3,000円の給付基礎日額も認められている。(平成5年則附則2条3項、平成5年徴収則附則3条3項)

  • 基本的に中小事業主等と同様ですが家内労働者及びその補助者には低い給付基礎日額も認められています
  • 例えば「漁船自営業者」(一人親方等)が特別加入しようとします。気になるのは保険料ですが、45/1,000と他の産業と比較して高水準です。
    療養(補償)等給付(治療費)は、給付基礎日額の高低にかかわらず全額補償されるため、あえて、給付基礎日額を最低水準に設定して、保険料を抑えつつ、業務上の病気やケガに備えるなどの対応をすることができます
    (その分、休業(補償)等給付は、手薄になりますが)
  • 一般の労働者のように被災直前の3か月間の賃金収入を基礎とするわけではありません

 

③ 海外派遣者の特別加入者の給付基礎日額は、中小事業主等の場合に準じて取り扱われる。

支給制限

 

特別加入者については、次の場合に保険給付の全部または一部を行わないことができる(支給制限が行われる)。
(法34条1項4号、法35条1項7号、法36条1項3号)

中小事業主等
  •  事故が特別加入保険料第1種特別加入保険料の滞納期間中(督促状の指定期限後の期間に限る)に生じたものであるとき
  •  業務災害の原因である事故が、中小事業主の故意または重大な過失によって生じたものであるとき
一人親方等
  •  事故が特別加入保険料第2種特別加入保険料の滞納期間中(督促状の指定期限後の期間に限る)に生じたものであるとき
海外派遣者
  •  事故が特別加入保険料第3種特別加入保険料の滞納期間中(督促状の指定期限後の期間に限る)に生じたものであるとき

 

  • 特別加入保険料を滞納している期間中の支給制限は特別加入者すべてが対象です
  • 支給制限であって、「費用徴収ではない点に特に注意してください

特別加入保険料が滞納されている期間中に生じたものであるときは、政府は、当該事故に係る保険給付の支給制限を行うことができるが、当該支給制限は、療養を開始した日(即死の場合は事故発生の日)の翌日から起算して3年以内の期間において支給事由の生じたものに限って行われる。(平成5年6月22日発労徴42号・基発404号)

  • 一人親方等の場合、特別加入団体が保険料を滞納することになります。事業主とみなされる特別加入団体は、あくまでも保険技術上の擬制事業主であって、保険料の実質的負担者は特別加入している一人親方等です。一人親方等に100%の保険給付を行い、それに要する費用を特別加入団体から費用徴収することは不合理であり、保険事務が煩雑になるため、「費用徴収ではなく支給制限が行われます
  • 特別加入者に保険給付の支給制限が行われた場合特別支給金の支給についても同様に支給制限が行われます

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