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ソリューション行政書士法人
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労災保険の「療養(補償)等給付」は、業務上の事由や通勤によって負傷したり、病気になった労働者に対し、治療に必要な費用を補償する制度です。
必要と認められる診察、薬剤、手術、入院、看護、移送などが対象となり、原則として、傷病が「治ゆ」するまで給付が行われます。
労災保険における療養には、大きく分けて次の2つがあります。
労災保険の療養に関する給付は、治療費だけでなく、薬剤、手術、入院、訪問看護、一定のリハビリテーションや移送費など、傷病の治療に必要と認められる幅広い費用を対象としています。
特に実務では、次の違いを押さえておくことが重要です。
| ポイント | 内容 |
| 療養の給付 | 労災病院・指定医療機関等で受ける現物給付。原則はこちら |
| 療養の費用の支給 | いったん自己負担し、後から請求する現金給付 |
| 支給期間 | 一律の期限はなく、原則として「治ゆ」まで |
| 事業主の役割 | 災害発生日・原因・発生状況等の証明や請求手続への助力 |
| 通勤災害 | 原則として200円の一部負担金あり |
| 業務災害 | 一部負担金なし |
とくに「治ゆ」は、完全に元の状態へ戻ることを意味するのではなく、症状が安定し、それ以上の治療効果が期待できなくなった状態も含む点に注意が必要です。
また、医療機関が労災保険指定医療機関かどうかによって請求手続が大きく異なるため、受診時に確認しておくことが重要です。
目 次
療養の給付の範囲
労災保険法13条2項では、療養の給付として、政府が必要と認める次のものを給付の対象としています。
| 療養の内容 | |
|---|---|
| 1 | 診察 |
| 2 | 薬剤または治療材料の支給 |
| 3 | 処置、手術その他の治療 |
| 4 | 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護 |
| 5 | 病院または診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護 |
| 6 | 移送 |
この範囲は、健康保険法上の療養の給付とも基本的に共通しています。 参照 健康保険法63条1項「療養の給付の範囲」
「処置」には、例えば次のような医療行為が含まれます。
療養は病院や診療所で行われるものだけではありません。
長期間の療養が必要となる患者の増加などを背景として、住み慣れた自宅で療養する在宅医療も重要になっています。
「居宅における療養上の管理」とは、例えば、医師による訪問診療など、在宅患者に対して行われる医学的な管理をいいます。
また、「療養に伴う世話その他の看護」には、保険医療機関などによる訪問看護等が含まれます。
| 療養の給付と認められる場合 | 療養の給付と認められない場合 |
| 義歯を破損した場合にこれを補綴(ほてつ)しまたは修理すること (昭和24年11月11日基災発313号) | 眼鏡または義肢を破損した場合の修理または購入の費用 (昭和24年11月11日基災発313号) |
| 歯科補綴の効果またはその技術上の必要からの金冠の使用 (昭和23年2月23日基災発24号) | 死体または遺骨を遺族に送り届けるための費用 (昭和27年10月28日基発747号) |
| リハビリテーション医療
| 遠隔地において死亡した場合の火葬料及び遺骨を移送するに必要な費用 (昭和24年7月22日基収2303号) |
| 柔道整復師の骨折、脱臼に対する施術(応急の場合を除き、医師の同意を得たもの)(昭和31年11月6日基発754号) | 本来葬儀屋において行うべき処置を医師が代行したと認められる場合、例えば死体をアルコールなどで払拭し、分泌物漏洩のおそれのある部位(口腔、耳鼻、影部など)を脱脂綿で充填する場合の費用(昭和23年7月10日基災発97号) |
| 温泉療養(病院などの付属施設で医師の直接の指導のもとに行うもの) (昭和25年10月6日基発916号) ※治ゆ前のものに限る。 | |
| 災害現場において医師の診察を受けず、被災者を医療機関への搬送の途中当該被災者が死亡した場合の、当該被災者が死亡に至るまでに要した搬送の費用 (昭和30年7月13日基収841号) | |
| 災害現場などから医療機関への移送、転医などに伴う移送、通院(一定の場合に限る) (平成20年10月30日基発1030001号、昭和31年9月22日基収1058号) |
療養の給付は、原則として、その傷病が療養を必要としなくなるまで行われます。
(昭和23年1月13日基災発3号)
具体的には、
まで給付が継続します。
労災保険における「治ゆ」は、必ずしも事故や病気になる前の状態に完全に戻ったことを意味しません。
症状が残っていたとしても、
症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行っても、それ以上の治療効果が期待できず、療養の余地がなくなった状態
になれば、労災保険上は「治ゆ」と判断されます。
いわゆる「症状固定」と呼ばれる状態です。
したがって、療養の給付について「事故から○年間」といった一律の支給期間は定められていません。
また、一度「治ゆ」とされた後であっても、その傷病が再び悪化し、改めて療養が必要となった場合には、「再発」として再び療養の給付を受けられることがあります。
なお、国民年金や厚生年金の障害年金では、原則として初診日から1年6か月を経過した日などを「障害認定日」として障害状態を判断しますが、労災保険の療養の給付はこれとは仕組みが異なります。
| 労災病院など | 社会復帰促進等事業として設置された病院若しくは診療所 | 全国には、約30の労災病院があり(総合せき損センターなど含む)、 総病床数約12,000床のベッドを有しています。 |
| 指定医療機関 | 都道府県労働局長の指定する病院若しくは診療所、薬局若しくは訪問看護事業者 |
| 保険給付 | 定義 | |||
|---|---|---|---|---|
| 指定病院等 | 療養の給付 | 労災病院等
| 指定医療機関 都道府県労働局長の指定する
| |
| 健診給付病院等 | 二次健康診断等給付 | 二次健康診断等給付医療機関 都道府県労働局長の指定する
| ||
労災病院や労災保険指定医療機関で「療養の給付」を受ける場合には、所定の請求書を医療機関等を経由して所轄労働基準監督署長へ提出します。
(則12条1項、則18条の5第1項)
つまり、原則として労働者本人が医療費をいったん全額支払ってから労働基準監督署へ請求する仕組みではありません。
請求書には、主に次の事項を記載します。
| 記載事項 | 事業主の証明 |
| 労働者の氏名、生年月日、住所 | ― |
| 事業の名称、事業場の所在地 | ― |
| 負傷または発病の年月日 | 必要 |
| 災害の原因・発生状況 | 必要 |
| 療養を受けようとする指定病院等の名称・所在地 | ― |
| 複数事業労働者である場合はその旨 | ― |
このうち、
については、原則として事業主の証明が必要となります。
労災保険指定医療機関以外の医療機関で受診した場合などには、「療養の給付」ではなく、療養の費用の支給を請求することがあります。
この場合、原則として労働者がいったん医療機関へ費用を全額支払い、その後、所定の請求書を所轄労働基準監督署長へ直接提出します。
(則12条の2第1項・2項、則18条の6第1項)
ただし、都道府県労働局長が定める指名施術所で、
などの施術を受けた場合には、施術所を経由して請求できる場合があります。
| 療養の給付 | 療養の費用の支給 | |
| 主な利用先 | 労災病院・労災保険指定医療機関 | 指定医療機関以外など |
| 給付方法 | 現物給付 | 現金給付 |
| 窓口での支払い | 原則不要 | 原則としていったん全額支払う |
| 請求書 | 指定病院等を経由 | 原則として労基署へ直接提出 |
| 療養の費用の請求書への記載事項 | 証明 | |
|---|---|---|
| 1 | 労働者の氏名、生年月日及び住所 | |
| 2 | 事業の名称及び事業場の所在地 | |
| 3 | 負傷または発病の年月日 | 事業主の証明 |
| 4 | 災害の原因及び発生状況 | 事業主の証明 |
| 5 | 傷病名及び療養の内容 | 診療担当者の証明 |
| 6 | 療養に要した費用の額 | 診療担当者の証明 |
| 7 | 療養の給付を受けなかった理由 | |
| 8 | 2021改正労働者が複数事業労働者である場合は、その旨 |
なお、看護や移送に要した費用については、その費用額を証明できる書類を請求書に添付することで足ります。
労災保険の請求手続は原則として労働者が行いますが、事業主にも一定の協力義務があります。
労働者が事故などによって自ら保険給付の請求手続を行うことが困難な場合、事業主は、その手続を行うことができるよう助力しなければなりません。(則23条1項)
また、労働者から保険給付を受けるために必要な証明を求められた場合には、事業主は速やかに証明しなければなりません。(則23条2項)
一方、事業主は、自らの事業に関する業務災害、複数業務要因災害または通勤災害の保険給付請求について、所轄労働基準監督署長に意見を申し出ることもできます。(則23条の2第1項)
派遣労働者が労働災害に遭った場合、保険給付請求書における事業主証明は、原則として派遣元事業主が行います。
ただし、実際に災害が発生した場所や状況を把握しているのは派遣先であることが多いため、一定の保険給付について最初の請求を行う際には、
などの添付が必要とされています。
(昭和61年6月30日基発383号、発労徴41号)
通勤災害について「療養給付」を受ける労働者には、原則として一部負担金が課されます。(労災保険法31条2項)
これは、業務災害が使用者の災害補償責任を基礎としているのに対し、通勤災害は業務外の災害であるという制度上の違いによるものです。
そのため、
という違いがあります。
次のような場合には、一部負担金は徴収されません。
(則44条の2第1項、昭和52年3月30日基発192号)
また、通勤災害によって即死した場合には、そもそも療養給付を受けないため、一部負担金も生じません。
一部負担金は、原則として200円です。
(労災保険法31条2項、則44条の2第2項)
ただし、健康保険法上の日雇特例被保険者については100円とされています。
また、実際に療養に要した費用の総額が200円または100円を下回る場合には、その実費相当額が一部負担金となります。
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