労災保険法
療養の給付の範囲

労災の療養(補償)給付とは、仕事中や通勤中に負った怪我や病気の治療にかかる費用を、労災保険が全額負担する制度です。治療費・薬剤費・入院費・通院費など、症状が治る (または症状固定になる) までの必要な費用が補償され、

  1. 労災病院や指定医療機関で受ける「療養の給付」(現物給付:原則)と、
  2. それ以外の医療機関で受けた場合の「療養の費用の支給」(現金給付:例外)

の2種類があります。



目 次

  1. 療養の給付の範囲
  2. 支給期間
  3. 療養の給付の担当機関
  4. 療養の給付の請求
  5. 療養の費用の請求
  6. 一部負担金の納付義務者
  7. 一部負担金の額
  8. 徴収方法

療養の給付の範囲

 

  労災保険法13条2項
(以下のうち政府が必要と認めるもの)
健康保険法63条1項「療養の給付の範囲」
1

診察

2 薬剤または治療材料の支給
3 処置、手術その他の治療
4 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
5 病院または診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
6 移送  
  • 「処置」とは、包帯の巻替え、患部の洗浄、点眼、注射などを指します。
  • 医療を提供する場は病院などが中心ですが国民の疾病構造の変化から長期間の療養生活を送る患者が増加していますそこで家族とともに住み慣れた家で療養生活を送りたいという在宅医療に対するニーズが高まってます(上記4.)。
  • 居宅における療養上の管理とは訪問診療などによる在宅患者に対する医学的管理をいい、「療養に伴う世話その他の看護とは在宅患者に対する保険医療機関等による訪問看護等をいいます(上記4.)。

 

療養の給付と認められる場合  療養の給付と認められない場合
義歯を破損した場合にこれを補綴(ほてつ)しまたは修理すること
(昭和24年11月11日基災発313号)
眼鏡または義肢を破損した場合の修理または購入の費用
(昭和24年11月11日基災発313号)
歯科補綴の効果またはその技術上の必要からの金冠の使用
(昭和23年2月23日基災発24号)
死体または遺骨を遺族に送り届けるための費用
(昭和27年10月28日基発747号)

リハビリテーション医療
(平成19年1月30日基発0130005号)

  • 「リハビリテーション医療」とは、業務上の事由または通勤による傷病労働者に対して当該傷病に係る本来の治療に加え、疾患別リハビリテーションなどを個々の症例に応じて総合的に実施して、労働能力の回復をはかり職場復帰への医学的指針を与えるまでの一連の行為をいいます。
    (平成19年1月30日基発0130005号)

    なお、「リハビリテーション医療」の中で、理学療法士、作業療法士などにより実際に行われる医療的な「治療・訓練」そのものを「医学的リハビリテーション」といいます。
遠隔地において死亡した場合の火葬料及び遺骨を移送するに必要な費用
(昭和24年7月22日基収2303号)
柔道整復師の骨折脱臼に対する施術(応急の場合を除き、医師の同意を得たもの)(昭和31年11月6日基発754号) 本来葬儀屋において行うべき処置を医師が代行したと認められる場合、例えば死体をアルコールなどで払拭し、分泌物漏洩のおそれのある部位(口腔、耳鼻、影部など)を脱脂綿で充填する場合の費用(昭和23年7月10日基災発97号)
温泉療養(病院などの付属施設で医師の直接の指導のもとに行うもの)
(昭和25年10月6日基発916号)

治ゆ前のものに限る
 
災害現場において医師の診察を受けず被災者を医療機関への搬送の途中当該被災者が死亡した場合の当該被災者が死亡に至るまでに要した搬送の費用
(昭和30年7月13日基収841号)
 
災害現場などから医療機関への移送転医などに伴う移送通院(一定の場合に限る)
(平成20年10月30日基発1030001号、昭和31年9月22日基収1058号)
 

支給期間

 

(昭和23年1月13日基災発3号)

  •  療養の給付の期間については、その傷病が療養を必要としなくなる治ゆまたは労働者の死亡まで行われ、いったん療養を必要としなくなった場合も、その後再び当該傷病につき療養を必要とするに至った場合(再発)には、再び給付を受けられる
  •  療養の給付はその傷病が療養を必要としなくなるまで行われますが症状が残っていてもそれが安定してもはや治療の効果が期待できず療養の余地がなくなったときには、「治ゆとみなされ療養の必要がなくなったものとして療養補償給付は行われなくなります
  •  「治ゆ」とは、その症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行っても、もはや治療の効果が期待できず療養の余地がなくなった状態をいう。
    • 支給期間は限定されていません

 

 なお国民年金法厚生年金保険法においては、「障害認定日初診日から起算して1年6か月を経過した日その期間内にその傷病が治った場合においてはその治った日)」に障害等級に該当するかどうかで支給要件が規定されていて治ゆ前や治ゆ後といった区分ではありません

 

療養の給付の担当機関

 

則11条
1 療養の給付は、社会復帰促進等事業として設置された病院若しくは診療所又は都道府県労働局長の指定する病院若しくは診療所薬局若しくは訪問看護事業者において行う。

 ⇨ 厚生労働省「労災保険指定医療機関検索」サイト

 

労災病院など 社会復帰促進等事業として設置された病院若しくは診療所 全国には、約30の労災病院があり(総合せき損センターなど含む)、 総病床数約12,000床のベッドを有しています。
指定医療機関 都道府県労働局長の指定する病院若しくは診療所薬局若しくは訪問看護事業者  
  •  療養の給付は健康保険法に基づき指定する病院若しくは診療所または薬局若しくは訪問看護事業者では行うことができません
    • ​なお健康保険法に基づき指定する病院若しくは診療所または薬局若しくは訪問看護事業者」は、街のいたるところにあります
  保険給付 定義
指定病院等 療養の給付

労災病院等

  • 社会復帰促進等事業として設置された病院若しくは診療所

指定医療機関

都道府県労働局長の指定する

  • 病院若しくは診療所
  • 薬局
  • 訪問看護事業者
健診給付病院等 二次健康診断等給付

二次健康診断等給付医療機関

都道府県労働局長の指定する

  • 病院若しくは診療所

療養の給付の請求

 

療養補償給付たる療養の給付を受けようとする者は、所定事項を記載した請求書を、当該療養の給付を受けようとする指定病院等を経由して所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。(則12条1項、則18条の5第1項)

 

療養補償給付たる療養の給付請求書に記載すべき事項のうち、

  • 負傷または発病の年月日
  • 災害の原因及び発生状況については、事業主の証明を受けなければならない。(則12条1項・2項)

負傷、疾病、障害または死亡が発生した事業場以外の事業場(非災害発生事業場の事業主は除かれています。(則12条2項かっこ書)

 

  療養の給付の請求書への記載事項 事業主の証明
1  労働者氏名生年月日及び住所  
2  事業名称及び事業場所在地  
3  負傷または発病の年月日 必要
4  災害の原因及び発生状況 必要
5  療養の給付を受けようとする指定病院等の名称及び所在地  
6  2021改正労働者複数事業労働者である場合は、その旨

療養の費用の請求

 


療養の費用の支給を受けようとする者は、当該療養にかかった費用を全額医療機関に支払い、請求書のうち所定事項に事業主の証明及び診療担当者の証明を受けたうえで、原則として、当該請求書を直接所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。(則12条の2第1項・2項、則18条の6第1項)

療養の費用に係る請求書は原則として労働者本人が所轄労働基準監督署長に提出することとされていますただし労働者が都道府県労働局長が定める指名施術所で施術あん摩マッサージ指圧はりきゅう柔道整復などを受けた場合は当該施術所を経由して提出することが可能です。(則12条の2第1項ただし書)

 

療養補償給付については

  1. 療養の給付病院を経由)」の場合と
  2. 療養の費用の支給病院を経由しない)」の場合には請求手続きが異なっています

 

療養の費用の支給請求書に記載すべき事項のうち、

  • 負傷または発病の年月日
  • 災害の原因及び発生状況については、「事業主の証明を受けなければならない。(則12条の2第2項)

負傷、疾病、障害または死亡が発生した事業場以外の事業場(非災害発生事業場の事業主は除かれています(則12条2項かっこ書)

 

療養の費用の支給請求書に記載すべき事項のうち

  • 病名及び療養の内容
  • 療養に要した費用の額(看護(病院または診療所の労働者が提供するもの及び訪問看護を除く)または移送に要した費用の額を除く)については、

診療担当者の証明を受けなければならない。(則12条の2第2項、則18条の6第2項・3項)

 

  療養の費用の請求書への記載事項 証明
1  労働者氏名生年月日及び住所  
2  事業の名称及び事業場の所在地  
3  負傷または発病の年月日 事業主の証明
4  災害の原因及び発生状況 事業主の証明
5  傷病名及び療養の内容 診療担当者の証明
6  療養に要した費用の額 診療担当者の証明
7  療養の給付を受けなかった理由  
8  2021改正労働者が複数事業労働者である場合は、その旨  

「看護または移送に要した費用」については、「費用の額を証明することができる書類」を、請求書に添付することで足ります。

 

  •  保険給付を受けるべき者が、事故のため、みずから保険給付の請求その他の手続を行うことが困難である場合には、事業主は、その手続を行うことができるように助力しなければならない。(則23条1項)
  •  事業主は、保険給付を受けるべき者から保険給付を受けるために必要な証明を求められたときは、すみやかに証明をしなければならない。(則23条2項)

事業主は、当該事業主の事業に係る業務災害、複数業務要因災害または通勤災害に関する保険給付の請求について、所轄労働基準監督署長に意見を申し出ることができる。(則23条の2第1項)

 

  • 保険給付請求書事業主の証明派遣元事業主が行うが、当該証明の根拠を明らかにさせるため、死傷病報告書の写など災害の発生年月日、災害の原因及び災害の発生状況に関して派遣先事業主が作成した文書を療養(補償)給付以外の保険給付の最初の請求を行う際に添付しなければならない。(昭和61年6月30日基発383号、発労徴41号)
  • 当該派遣労働者に係る労働者派遣契約の内容などを把握するため、当該派遣労働者に係る「派遣元管理台帳の写を当該保険給付請求書添付しなければならない。(昭和61年6月30日基発383号、発労徴41号)

一部負担金の納付義務者

 

療養給付を受ける労働者は、一部負担金納付しなければならない。(法31条2項)

  • 通勤災害は業務外の災害であって、使用者の無過失補償責任を基盤とする業務災害とは性格が異なります。このため、通勤災害の受益者たる労働者も費用の一部を一部負担金のかたちで負担することとなっています。
  • 一部負担金を納付するのは療養給付を受ける労働者であり、「療養補償給付を受ける労働者からは一部負担金は徴収されません
  • 一部負担金を納付するのは、療養給付を受ける労働者であるため、通勤災害により即死した労働者が一部負担金を納付することはありません

 

  • 次の者は、一部負担金を徴収されない。(則44条の2第1項、昭和52年3月30日基発192号)
一部負担金が徴収されない場合
  1.  第三者の行為によって生じた事故により療養給付を受ける者
  2.  療養の開始後3日以内に死亡した者その他休業給付を受けない者
  3.  同一の通勤災害に係る療養給付について既に一部負担金を納付した
  4.  特別加入者

一部負担金の額

 

  • 一部負担金の額は、原則として、200円を超えない範囲内で厚生労働省令で定める額200円)であるが、健康保険法に規定する日雇特例被保険者である労働者については、100円とされている。(法31条2項、則44条の2第2項)
  • ただし、現に療養に要した費用の総額が200円(または100円に満たない場合には、当該現に療養に要した費用の総額に相当する額となる。(則44条の2第2項ただし書)

徴収方法

 

一部負担金の徴収は、労働者に支給される「休業給付であって最初に支給すべき事由の生じた日に係るものの額」から一部負担金の額に相当する額を控除することにより行われる。(昭和52年3月30日基発192号)

  • 一部負担金の徴収事務の簡素化のため、保険給付の額の一部から一部負担金相当額を控除することが規定されています。
  • 一部負担金を病院などの窓口で納付するのではありません
  • 一部負担金は、「最初の休業給付の額から控除されます

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