脱退一時金

外国人については、滞在期間が短く保険料を支払っても老齢給付に結びつかないことも考えられます。そこで、保険料の掛捨て防止の趣旨から設けられたのが、脱退一時金制度です。(国民年金法附則9条の32、厚生年金法附則291)

被保険者期間に応じて一時金の形式で支給(支給上限5年)され、受給するとそれまでの被保険者期間がなくなります。

※ 支給上限については、在留資格の見直しや外国人の滞在期間の長期化を踏まえ、令和2年改正で3年から5年に引き上げた。

(参考)令和2年改正で3年から5年に引き上げられた理由

  • 令和元年施行の改正出入国管理法により、期間更新に限度のある在留資格の上限が5年に引き上げられたこと
  • 制度創設時と比べて、3~5年滞在した者の割合が外国人出国者の約5%から約16%に増加したこと 

 

  1. 国民年金の脱退一時金
    1. 支給要件
    2. 支給額
  2. 厚生年金の脱退一時金
    1. 脱退一時金の支給要件
    2. 支給額(厚生年金)
    3. 支給率(厚生年金)
    4. 不服申立て
  3. 国交省への手続き
  4. 脱退一時金制度の見直し
    1. 改正の狙い
    2. 見直し内容
  5. 脱退一時金を納税管理人によって受け取る場合

 

国民年金の脱退一時金

支給要件

支給要件(すべて)
  1.  請求の日の前日において請求の日の属する月の前月までの「第1号被保険者としての被保険者期間に係る
    1. 保険料納付済期間の月数
    2. 保険料4分の1免除期間の月数の4分の3に相当する月数
    3. 保険料半額免除期間の月数の2分の1に相当する月数及び
    4. 保険料4分の3免除期間の月数の4分の1に相当する月数合算した月数が6か月以上であること。
  2.  日本国籍を有しない者(被保険者でない者限る)であること。
  3.  老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていない(保険料納付済期間、保険料免除期間及び合算対象期間を合算した期間が10年に満たない)こと。
  4.  日本国内に住所を有しないこと。
  5.  障害基礎年金その他政令で定める給付の受給権を有したことがないこと。
  6.  最後に被保険者の資格を喪失した日から起算して2年を経過していないこと。
  • 要件6.の2年間は、権利関係の速やかな確定をその趣旨とする「除斥期間」と呼ばれているものです。
  1. 国民年金法に規定する脱退一時金
  2. 厚生年金保険法に規定する脱退一時金の支給要件はそれぞれ異なるため所定の要件を満たしていれば両方の支給を受けることができます

 

 具体例
  •  請求の日の属する月の前月までの第1号被保険者としての被保険者期間に係る保険料納付済期間を3か月及び保険料4分の3免除期間を4か月有する者
 →保険料納付済期間3か月)+保険料4分の3免除期間4か月×1/4=1か月)=4か月6か月不支給
  •  請求の日の属する月の前月までの第1号被保険者としての被保険者期間に係る保険料納付済期間を3か月及び保険料半額免除期間の月数を6か月有する者
 →保険料納付済期間3か月)+保険料半額免除期間6か月×1/2=3か月)=6か月6か月支給

 

脱退一時金についての裁定の請求は、所定の事項を記載した請求書を日本年金機構に提出することによって行わなれます。(則63条1項)

参照 → 各要件における「被保険者期間」のカウント方法

 

 

支給額

 ざっくりいうと脱退一時金は支払った保険料の半額が支給されることになります

 

脱退一時金の計算式

最後に保険料を納付した月が属する年度の保険料額×2分の1×支給額計算に用いる数

「支給額計算に用いる数」は、保険料納付済期間等の月数の区分に応じて定められています。
最後に保険料を納付した月が、2023年(令和5年)4月から2024年(令和6年)3月の場合の具体的な支給額は、以下のとおりです。

(※)保険料の一部免除を受けつつ納付した期間があった場合は、免除の種類に応じた期間が合算されます。

厚生年金の脱退一時金

脱退一時金の支給要件

 

誰が請求できるのか

まず大前提として

日本国籍を有しない者

でなければなりません。

 


永住者は

  • 在留資格は永住者
  • しかし国籍は外国

です。

したがって

〇 脱退一時金請求可能

です。


被保険者期間6か月以上

厚生年金の加入期間が

6か月以上

必要です。

6か月未満なら請求できません。


支給要件(全部必要)

次のすべてを満たします。


① 老齢厚生年金の受給資格がない

現在の制度では

老齢年金は原則

受給資格期間10年

です。


例えば

加入期間が12年ある外国人なら

既に受給資格があります。

その場合

❌ 脱退一時金請求不可

です。


ポイント

受給開始年齢に達しているかどうかは関係ありません。

受給資格期間を満たした時点で不可です。

 

65歳になっていないから脱退一時金を請求できるか →  ×

受給資格期間があれば請求できません。


② 日本国内に住所がない

帰国していることが必要です。

日本に住んでいる間は請求できません。


③ 障害厚生年金等の受給権を取得したことがない

次の受給権を取得したことがある人は請求できません。

  • 障害厚生年金
  • 障害手当金
  • 特例老齢年金
  • 旧法の障害年金等

遺族厚生年金は含まれない

上にある給付は

すべて

障害系の給付

です。


したがって

遺族厚生年金の受給権を持ったことがあっても

脱退一時金は請求可能です。

 


④ 最後の国民年金資格喪失から2年以内

これが一番ややこしいです。


注意

基準は

❌ 厚生年金資格喪失日

ではありません。


基準は

〇 国民年金資格喪失日

です。


厚生年金喪失

その後も日本に滞在

国民年金加入

帰国

国民年金資格喪失

この場合

国民年金資格喪失日から2年

で判定します。

 


国民年金の脱退一時金との関係

重要です。


国民年金法

厚生年金保険法

の脱退一時金は

別制度です。


そのため

要件を満たせば

  • 国民年金の脱退一時金
  • 厚生年金の脱退一時金

の両方を受けられます。


回数制限はない


法律上

回数制限は規定されていない

ため、

要件を満たすたびに請求できます。


例えば

来日

厚生年金加入

帰国

脱退一時金請求

その後

再来日

再度厚生年金加入

帰国

再度要件を満たせば請求可能です。


まとめ

脱退一時金の支給要件は次の6つです。

① 日本国籍を有しない

② 厚生年金加入期間6か月以上

③ 老齢厚生年金の受給資格期間を満たしていない

④ 日本国内に住所がない

⑤ 障害厚生年金等の受給権を取得したことがない

⑥ 最後の国民年金資格喪失日から2年以内


ひっかけは

  • 永住者は請求できる → ○
  • 日本人は請求できない → ○
  • 遺族厚生年金受給権者は請求できない → ×
  • 基準日は厚生年金資格喪失日 → ×
  • 65歳未満なら請求できる → ×
  • 老齢厚生年金の受給資格期間を満たすと請求不可 → ○

支給額

計算式

被保険者であった期間の平均標準報酬額※1×支給率(保険料率×2分の1×支給率計算に用いる数)※2

※1 被保険者期間であった期間の平均標準報酬額は、以下のA+Bを合算した額を全体の被保険者期間の月数で除して得た額をいいます。

A 2003年(平成15年)4月より前の被保険者期間の標準報酬月額に1.3を乗じた額
B 2003年(平成15年)4月以後の被保険者期間の標準報酬月額および標準賞与額を合算した額

支給率

 

支給率」は、最終月(最後に被保険者の資格を喪失した日の属する月の前月)の属する年の前年10月保険料率(最終月が1月から8月までの場合にあっては、前々年の10月保険料率)に2分の1を乗じて得た率に、被保険者であった期間に応じて政令で定める数6~60)を乗じて得た率(小数点以下1位未満の端数を四捨五入する)とする。(附則29条4項、令12条の2)

 

 

支給率
 (支給率)=(最終月の属する年の前年10月の保険料率)×(2分の1)×(被保険者であった期間に応じて政令で定める数

脱退一時金は労使折半のうち本人負担分だけを返す制度ですので保険料率に2分の1を乗じます

 

 

被保険者であった期間に応じて政令で定める数は、次の通りである。(令12条の2)

 

被保険者であった期間 政令で定める数
6か月以上12月未満 6
12月以上18月未満 12
18月以上24月未満 18
24か月以上30月未満 24
30月以上36月未満 30
36月以上42月未満 36
42月以上48月未満 42
48月以上54月未満 48
54月以上60月未満 54
60月以上 上限60

不服申立て

厚生労働大臣による脱退一時金に関する処分に不服がある者は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内社会保険審査会に対して審査請求をすることができる。(附則29条6項、社審法32条2項、社審法附則14項)

特定技能外国人の出国と国交省への手続きについて

脱退一時金制度の見直し

厚生労働省 年金制度改正法案の概要

改正のねらい

 

老後を日本で暮らす可能性がある外国人の方も増加していると考えられる中で、将来の年金受給に結びつけやすい仕組みとします。
外国人の滞在期間が長期化していることなどを踏まえ、支給上限を見直します。

 

脱退一時金制度の見直し内容

 

① 支給要件の見直し(再入国許可)
<公布から4年以内の政令で定める日から施行>
在留外国人の増加や滞在期間の長期化に伴い、老後を日本で暮らす可能性がある外国人も増加していると考えられる。現行制度にお いては、再入国許可付き出国をした場合でも脱退一時金の受給が可能であり、滞在途中の一時的な帰国の際に脱退一時金を受給するとそれまでの年金加入期間がなくなってしまう。
将来の年金受給に結びつけやすくする観点から、再入国許可付きで出国した場合脱退一時金は受給できません(日本に再入国しないまま許可期限を経過した場合には受給が可能) 。
② 支給上限の引き上げ 滞在期間の長期化が進む中、保険料納付が老齢年金の受給に結びつかない外国人にとっては、脱退一時金の必要性が高まっている側 面もあると考えられる。 ※1  5~10年滞在した外国人の割合:2020年 約6%  ⇒ 2023年 約18%
※2  技能実習制度に代わり育成就労制度が創設される予定。 ⇒ 育成就労制度(3年)を経て特定技能1号(5年)に移行し、計8年我が国に滞在する者が増加すると考えられる。 
在留資格の見直しや滞在期間も踏まえて、支給上限を現行の5年から8年に引き上げる。 (政令で措置予定)

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