労災保険法
遺族(補償)年金

遺族(補償)等年金は、お亡くなりになった方の収入によって生計を維持していた配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹のうち最先順位者が受け取れますが、妻以外の遺族については、労働者の死亡の当時に一定の高齢又は年少であるか、あるいは一定の障害の状態にあることが必要です。

覚えるべき論点。

① 遺族補償年金の受給順位
配偶者→子→父母→孫→祖父母→兄弟姉妹

② 生計維持とは
生計同一+収入要件

③ 共働きでも生計維持関係あり

④ 胎児は出生時に生計維持されていたとみなされるが、死亡時に障害状態だったとはみなされない

⑤ 年金額
153日・201日・223日・245日
(1人・2人・3人・4人以上)

 

目 次

  1.  

遺族補償年金を受けられる人

労働者が業務上死亡した場合、次の親族が対象になります。

  • 配偶者
  • 父母
  • 祖父母
  • 兄弟姉妹

ただし、

「死亡した労働者の収入によって生計を維持していたこと」

が必要です。

これを生計維持関係といいます。

 

内縁の妻・夫も対象

法律上の婚姻届を出していなくても、

事実上夫婦として生活していた

なら配偶者として扱われます。

つまり、

  • 内縁の妻
  • 内縁の夫

も受給できます。


生計維持とは

「全部養われていた」必要はありません。

例えば共働き夫婦でも、

  • 夫が生活費を一部負担
  • 妻も収入がある

という状態なら、

相互に生活費を出し合っている

ため生計維持関係が認められます。


生計維持の判断

厚労省通達では、

死亡労働者の収入がなければ現在の生活を維持するのが困難

であれば認められます。

したがって、

  • 仕送りを受けていた親
  • 共働きの配偶者

なども対象になります。


年齢・障害要件

妻以外は一定の年齢または障害要件が必要です。

 

  • 18歳到達後最初の3月31日まで
  • または障害状態

父母

  • 60歳以上
  • または障害状態

  • 18歳到達後最初の3月31日まで
  • または障害状態

祖父母

  • 60歳以上
  • または障害状態

兄弟姉妹

  • 18歳到達後最初の3月31日まで
  • または60歳以上
  • または障害状態

遺族補償年金の順位

受給権者は次の順位で決まります。

順位 遺族
1 配偶者
2
3 父母
4
5 祖父母
6 兄弟姉妹

若年支給停止者

夫・父母・祖父母・兄弟姉妹には

55歳以上60歳未満

という区分があります。

この人たちは

受給資格はあるが60歳になるまで支給停止

です。

これを

若年支給停止者

といいます。

胎児であった子

死亡時に胎児だった子は、

生まれた時点で

死亡時から生計維持されていた子

とみなされます。


注意

胎児が障害を持って生まれても、

「死亡時に障害者だった」

とはみなされません。

そのため、

18歳到達後最初の3月31日を過ぎれば受給資格を失います。

試験でよく出る論点です。

重婚的内縁関係にあった場合

例えば

  • 法律上の妻A
  • 長年同居している内縁の妻B

がいる場合です。


原則

法律上の妻が受給権者


例外

法律婚が

  • 実体を失っている
  • 長期別居(実務上10年程度)
  • 将来復縁の見込みがない

なら

内縁配偶者が受給権者になります。

労働者を故意に殺害

当然に受給不可です。


先順位者を故意に殺害

例えば、

子が

母(先順位者)

を故意に殺害した場合

その子は遺族年金を受けられません。


ポイント

過失致死は含みません。

故意のみです。

年金額は

受給権者+同居している受給資格者

の人数で決まります。


人数 年金額
1人 給付基礎日額×153日
2人 給付基礎日額×201日
3人 給付基礎日額×223日
4人以上 給付基礎日額×245日

妻だけ特例

1人受給の場合でも

  • 55歳以上の妻
  • 障害のある妻

なら

給付基礎日額×175日

になります。


受給権者が子1人、

同居する母が1人

なら遺族数は2人。

したがって

給付基礎日額×201日

が支給されます。


受給権者が複数いる場合

例えば

受給権者が3人いる場合

年金総額を3等分します。


遺族数が6人
→ 年金額は245日分

受給権者3人

245日分 ÷ 3

 

を各人が受給します。

所在不明による支給停止

 

受給権者が

1年以上行方不明

の場合、

同順位者や次順位者の申請により

その人への支給を停止できます。


停止時期

行方不明になった月にさかのぼり、

その翌月から停止。


見つかった場合

支給停止解除を申請できます。

ただし、

見つかった時点まで遡って支給するわけではない

のがポイントです。

 

解除した月の翌月から支給再開になります。

失権

 

■ ① 結論(まず一言)

遺族として保護する必要がなくなったら、遺族(補償)年金は失権する


 

■ ② 制度の本質

遺族(補償)年金は

死亡労働者によって生活を支えられていた遺族の生活保障


■ だから

次のような場合は

  • 新しい生活基盤ができた
  • 親族関係が切れた
  • 年齢要件から外れた

保護不要となり失権


■ ③ 失権事由を趣旨で整理


■ ① 死亡

本人がいないので当然終了


■ ② 婚姻(内縁含む)

新たな生活共同体ができた


■ 特に重要

再婚後に離婚しても復活しない


■ なぜ?

一度「遺族としての保護必要性」が消えたから


 

■ ④ 養子縁組

 

■ 直系以外の養子

他家に入る

→ 死亡労働者との生活保障関係が切れる


■ 逆に

直系血族・直系姻族ならOK


 

■ ⑤ 離縁

死亡労働者との親族関係終了

保護根拠消滅


 

■ ⑥ 年齢要件(子・孫・兄弟姉妹)

 

■ 原則

18歳年度末で終了


ただし

障害状態なら継続


 

■ ⑦ 障害状態の消滅

障害によって保護されていた人が

回復した

保護不要 → 失権


 

■ ⑧ なぜ「若年妻5年失権」がないのか

ここは遺族厚生年金との違い。


■ 労災の趣旨

使用者責任に基づく補償


■ だから

若年妻だけ切る制度はない


 

■ ⑨ 失権後の処理(超重要)

ここは「誰か残るか」で変わります。


■ ケース① 同順位者あり

 

▼ 例

妻+子2人
→ 子1人失権


▼ 結果

額の改定


■ なぜ?

受給権そのものは残るから


■ ケース② 後順位者あり

 

▼ 例

妻失権
→ 父母が後順位


▼ 結果

転給


■ 意味

新たに後順位者へ受給権移転


■ ⑩ 超重要整理

状況 効果
同順位者あり 額改定
後順位者あり 転給

■ ⑪ よくある誤り

 

❌ 離婚後に復活

→ しない


❌ 内縁は婚姻に含まれない

→ 含む


❌ 若年妻5年失権あり

→ 労災にはない


■ ⑫ 一言でまとめ

「遺族として守る必要がなくなったら失権し、残る遺族がいれば調整・転給される」


■ ⑬ 超コンパクト暗記

  • 婚姻 → 失権
  • 内縁含む
  • 同順位 → 額改定
  • 後順位 → 転給

養子になったときの受給権の消滅

覚え方は「祖父母の養子はOK、他人の養子はNG」です。

 

 

原則

遺族補償年金を受けている子などが

直系血族又は直系姻族以外の者の養子

になった場合、

遺族補償年金の受給権は消滅します。


なぜ失権するのか

遺族補償年金は

死亡した労働者による扶養の代替

という性格があります。

ところが、

他人の養子になると

新しい養親による扶養を受ける立場

になるため、

労災による遺族年金の必要性が低くなると考えられています。


 

「直系血族又は直系姻族」なら失権しない

ここが試験で非常によく出ます。


直系血族とは

  • 祖父
  • 祖母

など

上下に繋がる血族です。


直系姻族とは

配偶者側の

  • 義父
  • 義母
  • 義祖父母

などです。


具体例

父が労災死亡

妻が遺族補償年金を受給

妻が再婚して失権

子へ受給権が転給

生活のため祖父(死亡した父の父)の養子になる

この場合

祖父は直系血族

子は失権しない


 

どんな養子縁組で失権するか

例えば

  • 伯父
  • 叔母
  • いとこ
  • 知人

などの養子になる場合

直系血族でも直系姻族でもない

受給権消滅


「事実上の養子」も含まれる

法律上の養子縁組だけではありません。

通達では

実質的に親子として生活しており、養子関係を作ろうという合意がある状態

も養子とみなします。


例えば

未成年者を親戚が引き取り、

  • 一緒に生活
  • 扶養
  • 将来的に養子縁組する意思

 

がある場合です。

遺族(補償)年金前払一時金の請求

  • 受給権者が請求できる
  • 同一事由につき1回限り
  • 若年支給停止者も請求可能
  • 支給決定後でも1年以内なら請求可能

 

  • 時効は2年

本来、

遺族補償年金は毎年支給されます。

しかし、

一家の大黒柱が亡くなると

  • 生活費
  • 住宅費
  • 事業資金
  • 教育費

などでまとまったお金が必要になることがあります。

そこで

将来の年金を前倒しで一部まとめて受け取れる制度

遺族補償年金前払一時金

です。


請求できる人

遺族補償年金の受給権者です。


若年支給停止者も可能

例えば

55歳以上60歳未満の夫

は通常の年金は停止されています。

しかし

前払一時金は請求できる

という特例があります。


請求回数

同一事故につき

1回限り

です。

何度も請求できません。


転給後の受給権者も請求可能

例えば

妻が受給権者

再婚して失権

子に受給権が転給

この場合、

妻がまだ前払一時金を請求していなければ

子が請求可能

です。


請求時期

 

原則

遺族補償年金の請求と同時


例外

遺族補償年金の支給決定通知後

1年以内

なら追加請求できます。

 


時効

前払一時金の請求権は

2年

で時効消滅します。


ここが非常にひっかけられやすいところです。


整理

 

項目 期間
支給決定後に追加請求できる期間 1年
請求権の時効 2年

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