「特定受給資格者」とは、倒産、解雇その他の会社側の事情により、再就職の準備をする時間的余裕がないまま離職を余儀なくされた人をいいます。
形式上は本人が退職届を提出している場合でも、実際の離職原因が賃金未払い、長時間労働、ハラスメント、退職勧奨などにあるときは、特定受給資格者と判定されることがあります。
最終的な離職理由は、会社が記載した離職票だけで決まるのではありません。ハローワークが、本人への確認や提出資料の調査を行ったうえで判定します。
特定受給資格者には、一般の自己都合離職者と比べて、主に次の取扱いがあります。
自己都合退職の場合に適用される給付制限は、原則としてありません。
ただし、離職理由にかかわらず、基本手当には原則として7日間の待期期間があります。
7日間の待期後、自己都合離職者のような給付制限を受けずに支給対象となる
と説明する方が正確です。
一般の離職者は、原則として離職日前2年間に被保険者期間が12か月以上必要です。
一方、特定受給資格者は、
離職日前1年間に被保険者期間が通算6か月以上
あれば、受給資格を得られます。
年齢と算定基礎期間によっては、一般の離職者より基本手当の所定給付日数が多くなります。
特定受給資格者の離職理由は、大きく分けると次の2種類です。
目 次
会社について、次のような事実が生じ、それに伴って離職した場合です。
会社が完全に消滅した場合だけでなく、民事再生などによって事業を立て直している途中で離職した場合も含まれます。
大量の雇用変動について届出がされた場合や、多数の被保険者が人員整理によって離職した場合です。
例えば、事業所における被保険者数に対して、一定割合を超える大量離職が発生した場合が該当します。
単に同僚が何人か辞めたというだけではなく、事業縮小や人員整理による大規模な離職が対象です。
勤務していた事業所が廃止されたために離職した場合です。
事業所の廃止には、
事業活動が停止し、再開する見込みがない場合
も含まれます。
ただし、あらかじめ終了時期が決まっていた期間限定の事業が、予定どおり終了した場合は原則として含まれません。
事業所が移転し、通勤が著しく困難になったため離職した場合です。
代表的な基準は、
原則として、事業所の移転について通知された後、移転直後のおおむね3か月以内までに離職したことなどが判断要素となります。
| 分類 | 主な内容 |
|---|---|
| ① 解雇 | 普通解雇など |
| ② 労働条件の相違 | 採用時の説明と実態が著しく異なる |
| ③ 賃金問題 | 賃金未払い、大幅な減額 |
| ④ 長時間労働・安全問題 | 過重労働、危険防止措置の不実施 |
| ⑤ 不利益取扱い・ハラスメント | 妊娠、育児、介護、いじめなど |
| ⑥ 雇止め | 長期更新後の雇止め、更新明示後の雇止め |
| ⑦ その他の会社都合 | 退職勧奨、長期休業、違法事業など |
この7分類は説明上の整理であり、法令上は規則36条の各号ごとに判断されます。
これは最も典型。 ただし、
労働者本人の責めに帰すべき重大な理由による解雇 は除外。
組合除名による当然解雇も含む。 つまり、
会社に問題なくても、
組合除名で仕事を失った
場合も保護対象。
かなり特殊です。
超実務的重要。
いわゆる、 「話が違う」 です。
単なる軽微な違いではダメ。
労働条件の著しい相違が継続していることが重要です。
また、原則として、その事由が発生してから1年以内に離職した場合が対象となります。
特に:
と実態が違うケース。
ハローワークでも争点になりやすい。
かなり強い保護。
例えば、
本来30万円なのに、
実際15万円しか払われない。
→ 該当可能。
給料遅配も含む。 ただし、
一回遅れただけ
では弱い。
継続性が重視される。
これも重要。予想できない事情によって、毎月定期的に支払われる賃金が、それまでの賃金の85%未満に低下した場合です。
以前の賃金の85%未満に下がる。
つまり、 実質15%以上の減給。
例えば:
近年超重要。
これは36協定の一般限度。
離職日前6か月のうち、いずれかの月に時間外・休日労働が100時間以上あった場合です。
ここは「100時間超」ではなく、規定上は100時間以上である点に注意が必要です。
離職日前6か月のうち、連続する2か月以上について、時間外・休日労働の平均が1か月当たり80時間を超えた場合です。
例えば、
のいずれかが80時間を超えていれば、対象となる可能性があります。
会社が
「自己都合退職です」
と言っても、
長時間労働証拠があると、
特定受給資格者
になることがある。
例えば:
行政指導後も改善しないこと。
なお、実際に労働災害の被害を受けたことにより離職した場合は、行政機関からの事前の指摘がなくても該当することがあります
かなり重要。
いわゆる:
かなり高度な条文。
職種転換や転勤に際し、会社が労働者の職業生活を継続するために必要な配慮をしなかった場合です。
例えば、
などです。
単に本人が新しい職務を好まなかったというだけではなく、会社に必要な配慮が欠けていたかが判断されます。
会社に
職業生活継続への配慮義務 がある。
有期雇用保護。
有期労働契約が1回以上更新され、通算3年以上雇用されていた人が、契約更新を希望したにもかかわらず雇止めされた場合です。
契約締結時に、更新又は延長することが明示されていたにもかかわらず、本人が更新を希望しているのに雇止めされた場合です。
「更新する場合がある」という記載と、「更新する」と明示された場合とでは取扱いが異なることがあるため、契約書の表現も重要です。
超重要。
会社が放置したこと。
つまり、単に加害者がいた、だけではなく、
会社が改善措置を取らない
ことが重要。
相談後おおむね1か月を経過しても改善措置がない場合などが、目安として示されています。
ただし、暴行など事案が重大な場合は、必ずしも長期間会社の対応を待たなければならないという意味ではありません。
事業主や人事担当者から、退職するよう勧められ、それに応じて離職した場合です。
退職届を本人が提出していても、実質的に会社からの退職勧奨によるものであれば、単純な自己都合退職とは扱われません。
ただし、早期退職優遇制度に本人が自主的に応募した場合などは、事案によって取扱いが異なります。
会社都合休業。
3か月以上。
かなり特殊。
例えば:
原則として、その法令違反を知った後、3か月以内に離職した場合が対象となります。
労働条件の相違があった場合でも、離職時期などによって取扱いが変わることがあります。
| 離職の状況 | 主な取扱い |
|---|---|
| 採用時の条件と実際の条件が著しく相違し、所定期間内に離職 | 特定受給資格者 |
| 会社による条件変更で著しい相違が生じ、事由発生後1年以内に離職 | 特定受給資格者 |
| 事由発生後1年を経過してから離職 | 特定理由離職者となる可能性 |
| 単に手当が支払われなくなったなど | 賃金低下等の別基準で判断 |
「採用条件と違う」というだけで一律に特定受給資格者になるわけではなく、相違の程度、継続性、発生時期、離職時期を確認します。
「解雇などにより離職した者」とは、次のいずれかに該当する者をいう。(則36条)
採用条件と実際の労働条件が著しく異なることとなったことを理由に、当該事由発生後1年を経過するまでの間に離職した場合が該当します。
「著しい相違」とは、例えば次のような場合が該当します(賃金、時間外労働、就業場所など他に特定受給資格者に該当する基準が定められているものを除きます)。
次のいずれかに該当する場合に適用があります。
なお、当該事実があった場合においても、その後、通常の賃金支払の事実が3か月以上継続した場合には該当しません。
労働基準法、労働安全衛生法などの労働者保護法令や保安関係法令において、職業生活を継続する上で、危険または健康障害の生ずるおそれのある旨の法令違反について、所管の行政機関により改善に係る指摘がなされた事実があり、改善に係る指摘後、一定期間(概ね1か月程度)を経過後においても当該法令違反に係る改善が行われていないことを理由に離職した場合が該当します。
なお、労働災害により被害を受けたことにより離職した場合においては、改善に係る指摘の事実がない場合においても該当するものとされています。
特定受給資格者の所定給付日数は、離職時の年齢と算定基礎期間によって決まります。現在の厚生労働省の案内でも、次の表が示されています。
| 離職時の年齢 | 1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ― |
| 30歳以上35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
| 35歳以上45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
| 45歳以上60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
| 60歳以上65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
基本手当の所定給付日数は、年齢、被保険者であった期間、離職理由などによって決まり、全体として90日から360日の範囲で定められています。
算定基礎期間 被保険者として雇用された全ての期間(在籍期間)。所定給付日数を決定する際に利用する。
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