労災保険法
傷病(補償)年金

傷病(補償)年金とは

療養開始後1年6か月を経過しても治っておらず、

  1. 治ゆしていないこと
  2. 傷病等級(1~3級)に該当すること(一定の身体障害が残ったとき

この2つを満たす場合に職権で休業補償給付に代えて支給される年金です。

 

ポイント

「治っていない」ことが前提です。

⇨ 休業(補償)給付、療養(補償)給付、障害(補償)給付との関係

傷病補償年金を受給している労働者が、「刑事施設などに拘禁されている場合であってもその支給は停止されません

 

重要ポイント

  • 傷病補償年金は請求ではなく職権で支給決定される。
  • 療養給付は継続される。
  • 休業補償給付は支給されない。
  • 傷病補償年金は支給事由発生月の翌月から支給される。
  • 傷病等級に該当しなくなると受給権は消滅する。
  • 再び傷病等級に該当すれば傷病補償年金は再支給される。
  • 傷病補償年金の支給開始だけでは解雇制限は解除されず、療養開始後3年経過が必要である。

このように「制度の流れ」「給付相互の関係」「職権決定」「1年6か月」「3年」の5本柱で整理すると、理解しやすく、記憶にも残りやすくなります。

 

目 次

  1. 休業(補償)給付、療養(補償)給付との関係
    1. 療養開始後1年6か月経過後の流れ
  2. 支給要件
  3. 傷病(補償)年金の額
  4. 傷病(補償)年金の支給決定
  5. 障害の程度の変更
  6. 傷病補償年金と解雇制限
支給要件  

傷病補償年金は、業務上負傷し、または疾病にかかった労働者が、その傷病療養開始後1年6か月を経過した日、またはその日後において、次のすべての要件に該当するとき、その状態が継続している間、当該労働者に対して支給される。(法12条の8)

  1. 当該負傷または疾病治っていないこと
  2. 当該負傷または疾病による障害の程度厚生労働省令で定める傷病等級(1~3級)に該当すること
支給額 
  • 第1級 給付基礎日額313日分
  • 第2級 給付基礎日額277日分
  • 第3級 給付基礎日額245日分
支給期間 支給事由に該当する限り支給される
請求 所轄労働基準監督署長職権」により支給の決定を行う

保険給付との関係

 

(最重要)

保険給付 傷病補償年金との関係
療養(補償)給付 ○ 継続される
休業(補償)給付 × 支給されない
障害(補償)給付 ○ 治ゆ後に支給対象

つまり

療養給付   +  傷病補償年金  は併給される

休業補償給付は終了する


③ 流れを図で覚える

負傷・疾病

療養補償給付

休業補償給付

↓ 1年6か月 傷病等級該当

傷病補償年金

↓ 治ゆ

障害補償給付


④ 休業補償給付との切替え

傷病等級に該当した月

5月15日 傷病等級に該当


5月分までは 休業補償給付


翌月 6月から 傷病補償年金


つまり

「支給事由発生月の翌月から年金」

これがポイントです。


⑤ 支給決定

傷病補償年金は

本人の請求ではありません。 労働基準監督署長が

職権

で支給決定します。


⑥ 1年6か月経過後の届出

療養開始後

1年6か月

1か月以内 傷病の状態等に関する届 提出

監督署が 傷病等級を判断

療養開始後1年6か月経過後の流れ

             療養開始

               ↓

             1年6か月経過

               ↓

             1か月以内

             【提出義務者】休業(補償)給付受給者

             傷病の状態等に関する届書(則18条の2)を提出

               ↓

             労働基準監督署長が支給を判断

   ┌────────────────────┴────────────────────┐

   ↓                                         ↓

【傷病等級第1~3級に該当】                       【傷病等級に該当しない】

傷病(補償)年金                            休業(補償)給付を継続

   ↓                                         ↓

【提出義務者】傷病(補償)年金受給者                  【提出義務者】休業(補償)給付受給者

① 定期報告書(則12条)                        傷病の状態等に関する届書(則19条の2)

 ・年1回                                ・毎年1月1日~1月31日

 ・4~6月生まれ:6月30日まで

 ・7~12月生まれ:10月31日まで

 ※一定の場合は提出省略可

   ↓

【提出義務者】傷病(補償)年金受給者

② 傷病の状態等に関する届書(則19条の2)

 ・毎年1月1日~1月31日

 

 

 

定期報告書の提出が省略できる場合

年金たる保険給付の受給権者は、次のいずれかに該当するときは、定期報告書の提出を省略できます(労災保険則第21条第1項)。

  1. 所轄労働基準監督署長が、あらかじめ提出の必要がないと認めて通知したとき
  2. 厚生労働大臣が、住民基本台帳法に基づき、定期報告書と同一内容を含む本人確認情報の提供を受けることができるとき
  3. 番号利用法(マイナンバー法)に基づき、定期報告書と同一内容を含む特定個人情報の提供を受けることができるとき

「傷病の状態等に関する届書」は省略の対象ではありません。
省略できるのは、定期報告書のみです


 

1年6か月

 

労災保険法         休業給付基礎日額の最低・最高限度額 休業給付基礎日額の最低・最高限度額の適用開始 休業給付基礎日額については、療養を開始した日から起算して 1年6か月 を経過した日以後のものについては、年齢階層別の最低・最高限度額が適用される。
傷病(補償)等年金の支給要件 傷病補償年金の判定時期 傷病(補償)等年金は、業務上負傷し、又は疾病にかかった労働者が、当該負傷又は疾病に係る療養の開始後 1年6か月 を経過した日において、又は同日後に、その状態が継続している間、当該労働者に対して支給する。
健康保険法 傷病手当金の支給期間 傷病手当金の支給期間(通算1年6か月) 傷病手当金の支給期間は、同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病に関しては、その支給を始めた日から通算して 1年6か月間 である。
厚生年金法 障害認定日 障害認定日(原則初診日から1年6か月) 初診日から起算して 1年6か月 を経過した日
(その期間内においてその傷病が治った場合においては、その日)

 

障害の程度の変更

 

■ 結論(まずこれ)

障害の重さが変わったら、もらえる年金も変わる(または止まる)

 


■ ① 基本の仕組み

傷病補償年金は 障害の重さ(等級)に応じて支給される

 


 

■ ② 障害が重くなった・軽くなった場合

 

✔ ケース①:等級が変わった

例:

  • 3級 → 2級(悪化)
  • 3級 → 5級(軽くなった)

この場合 新しい等級の年金に切り替わる

  • 古い年金 → 終了
  • 新しい年金 → 支給開始

 

✔ ケース②:軽くなりすぎた

等級に該当しなくなった場合

年金はストップ(受給権消滅)


 

■ ③ でもここが重要

年金が止まっても終わりではない


✔ まだ治っていない+働けない場合

休業補償給付がもらえる


 

■ つまり

状態 支給
重い障害(等級あり) 傷病年金
軽くなった(等級なし)+働けない 休業補償

 

■ ④ 誰が判断するの?

労基署(監督署)が職権で決定しなければならない

  • 労働者の申請がなくても判断される
  • 等級が変われば自動的に変更される

 

■ ⑤ さらに重要なポイント(復活ルール)

一度年金が止まっても…


✔ 再び悪化した場合

また年金が復活する


■ つまり

  • 軽くなった → 年金ストップ
  • また悪化 → 年金復活

■ まとめ(これだけ覚えればOK)

  • 障害の程度で年金が決まる
  • 変われば → 年金も変更
  • 軽くなりすぎ → 年金ストップ
  • でも働けなければ → 休業補償
  • 再悪化 → 年金復活

■ 実務的に一番大事な理解

固定ではなく「状態に応じて給付が動く制度」

 

傷病補償年金の額は、傷病等級に応じ、次の通りである。(法18条1項、法23条2項、則18条1項、則別表第2)

傷病等 年金額
第1級 常に介護を要するもの 給付基礎日額313日分
第2級 随時介護を要するもの 給付基礎日額277日分
第3級 常に労務に服することができないもの 給付基礎日額245日分
  • 傷病等級に該当する障害の程度は、「労働能力喪失率を基準として定められています第1級から第3級についてはいずれも労働能力喪失率100分の100完全労働不能とされていますかなり重篤な状態といえます
  • 傷病等級と障害補償年金に用いる障害等級1級から3級同一内容です
  • 障害の程度は、「6か月以上の期間にわたって存する障害の状態により認定される。(則18条2項)
  内容 
通勤災害に係る介護 負傷,疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態にある介護
(「日常生活上必要な行為」とされる)
傷病(補償)等年金の障害の状態  6か月以上の期間にわたって存する障害の状態

傷病補償年金と解雇制限

ここは非常に重要です。

 

1年6か月

傷病補償年金開始

まだ解雇制限は解除されません。


3年経過

傷病補償年金受給中

打切補償 (平均賃金1200日分) 支払ったものとみなす


解雇制限解除


 
つまり

年金開始=解雇できる

ではありません。

療養開始後3年経過がポイントです。

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