特別支給金と保険給付との比較

まず結論

特別支給金は「保険給付ではない」。

被災労働者や遺族の*福祉の増進(労働者災害補償保険法29条の「社会復帰促進等事業の一環として、保険給付に上乗せして支給されます。

そのため、多くの場面で保険給付とは異なる取扱いになります。

 

一言で覚える

 

  • 相違点:「特別支給金は保険給付ではない」ため、費用徴収・損害賠償との調整・併給調整・審査請求の対象にならない一方、譲渡・差押えは可能です。
  • 類似点:「支給や年金の取扱いは保険給付に準じる」ため、支給制限・年金の一時差止め・端数処理・未支給請求・非課税・退職による受給権不変などは保険給付と同様に扱われます。

 

目 次

  1. 特別支給金の通則事項
  2. 相違点
  3. 類似点

特別支給金の通則事項

 

■ ① 結論(最短で覚える)

休業だけ2年、それ以外は全部5年


■ ② なぜこうなるのか(本質)

 

休業特別支給金

日々発生する給付

→ 細かい請求になる
早めに締切(2年)


■ その他(年金・一時金)

まとまった給付

→ 判断に時間がかかる
長めに5年


■ ③ 起算日の考え方(超重要)

全部バラバラに見えますが、実はルールは単純


■ 原則

「その給付の原因が確定した日の翌日」


■ 具体対応

給付 起算
休業 その日の翌日
障害 治ゆ日の翌日
死亡 死亡日の翌日
年金系 受給権発生日の翌日

■ ④ 例外(これだけ注意)

 

■ 傷病特別支給金

少し特殊

療養開始から1年6か月経過 or 該当日


■ ⑤ まとめ表(整理版)

区分 起算 期限
休業特別支給金 対象日の翌日 2年
その他すべて 原因発生日の翌日 5年

■ ⑥ よくある誤り

 

❌ 全部5年

→ 休業は2年


❌ 休業も5年

→ 違う


❌ 起算日は同じ

→ 給付ごとに違うが「翌日」が共通


■ ⑦ 一言でまとめ

「休業は短期(2年)、それ以外は長期(5年)」


■ ⑧ ミニ暗記

  • 休業 → 2年
  • それ以外 → 5年
  • 起算 → 翌日 

特別支給金の申請期限は次の通りである。(特別支給金則3条6項他)

 

特別支給金 起算日 申請期限
休業特別支給金  休業特別支給金の支給の対象となる日の翌日から起算して 2年以内
傷病特別支給金  療養開始後1年6箇月経過日又は同日後支給要件に該当することとなった日の翌日 5年以内
障害特別支給金  傷病が治ゆした日の翌日 5年以内
遺族特別支給金  死亡日の翌日 5年以内
傷病特別年金  傷病補償年金の受給権者となった日の翌日 5年以内
障害特別年金  障害補償年金の受給権者となった日の翌日 5年以内
障害特別一時金 障害補償一時金の受給権者となった日の翌日 5年以内
障害特別年金差額一時金  障害補償年金差額一時金の受給権者となった日の翌日 5年以内
遺族特別年金  遺族補償年金の受給権者となった日の翌日 5年以内
遺族特別一時金  遺族補償一時金の受給権者となった日の翌日 5年以内

特別支給金については、「申請期限が定められています

相違点

相違点(最重要)

 

① 事業主からの費用徴収

 

保険給付

 

○  行われる

例えば

  • 保険関係成立届未提出
  • 保険料滞納
  • 事業主の故意・重大な過失

などでは事業主へ費用徴収があります。


特別支給金

×  行われません。


② 不正受給

 

保険給付

○  費用徴収


特別支給金

× 費用徴収なし

民法上の不当利得返還で対応します。


③ 第三者行為災害

例えば交通事故

第三者から損害賠償を受けても

 

保険給付

○ 調整される


特別支給金

調整されません。

両方受け取れます。


④ 事業主から損害賠償

これも同じです。

保険給付は調整

特別支給金は調整なし


⑤ 社会保険との調整

 

保険給付

○  併給調整あり


特別支給金

× 調整なし


⑥ 譲渡・差押え

ここは頻出です。

 

保険給付

× 譲渡禁止

× 差押禁止


特別支給金

○ 譲渡できる

○ 差押えも可能


⑦ 不服申立て

 

保険給付

○ 労災保険審査官へ審査請求可能


特別支給金

× 審査請求不可


覚え方

保険給付ではないので

「保険給付だけの制度」は使えない

という発想です。

だから

  • 費用徴収なし
  • 損害賠償調整なし
  • 社会保険調整なし
  • 審査請求なし

になります。


コック食品事件(最判平成8年2月23日)

 

判例のポイント

特別支給金は

損害の補填ではない。

つまり

慰謝料・見舞金・生活援護

という性格です。

したがって

第三者や会社が支払う損害賠償から

控除できません。


一言で

特別支給金は損害賠償とは別のお金


特別支給金の性格

種類 性格
休業特別支給金 療養生活援護金
障害特別支給金 生活転換援護金
遺族特別支給金 遺族見舞金

類似点

 

① 支給制限

労働者の

  • 故意
  • 故意の犯罪
  • 重大な過失

で保険給付が支給制限なら

特別支給金も支給制限されます。


② 年金の一時差止め

保険給付が止まれば

特別支給金も止まります。


③ 年金の端数処理

保険給付と同じ。

つまり

1円未満切捨て


④ 未支給請求

未支給保険給付を請求できる人は

未支給特別支給金も請求できます。


⑤ 非課税

保険給付と同じく

所得税・住民税とも非課税です。


⑥ 退職しても受給権は変わらない

退職しても

保険給付も

特別支給金も

影響ありません。


 

比較表

項目 特別支給金 保険給付
法的性格 社会復帰促進等事業(福祉事業) 保険給付
事業主への費用徴収 ×
不正受給者への費用徴収 ×(不当利得返還)
第三者・事業主との損害賠償調整 ×
社会保険との併給調整 ×
譲渡・差押え ×
労災保険審査官への審査請求 ×
所得税・住民税 非課税 非課税

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